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【作詞入門】アイドル曲の歌詞の作り方。応援歌編
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【作詞入門】アイドル曲の歌詞の作り方。応援歌編

皆さん、落ち込んだときに励みになったり、元気づけられた応援歌はありませんか?

曲調はもちろんですが、その中の歌詞をさらに注目してみると巧みな工夫がされています。

今回は、応援歌の歌詞について解説していきましょう。

アイドル曲の歌詞の作り方。応援歌編

応援歌は、どちらかと言えば書きやすい歌詞のタイプと言えるでしょう。

では誰に対しての応援なのか?

応援歌を内別すれば、

きれいに対一人称、対二人称、対三人称に分かれますが、実際には上記が微妙にミックスされて、結果どのようにでも受け止められるようになっている場合が多いです。

日本人は昔から応援歌を好む傾向にあり、どの時代にもその時代を象徴する大ヒット応援歌があります。

私自身の応援歌の数は他の作詞家さんに比べると少ない方です。

加護亜依さんがまだ所属していた頃の「Girls Beat!!」の歌詞コンペに「前向きな歌なんていらない」(音源化はならず) を書いたくらいですから……。

それでは、見本となる曲をピックアップして解説したいと思います。

お手本神曲:PiiiiiiiN|開園DASH

作詞はPiiiiiiiNのメンバーでもある原あやのさんです。

テイスト

このグループにはロックテストの前向きな歌詞が多く、この曲も多分に漏れない作りとなっています。

かわいいもさる事ながら、とにかくかっこよさが売りです。

ブレない指針があるなら歌詞も書きやすい事でしょう。

私が思うに、次世代のメタルやロックの歌詞はまだ不熟なイメージがあります。

いまだに「闇を切り裂け 鎖をちぎれ」系の歌詞を歌っているグループが人気あったりするのですから。チャンスはこの辺にもあるのではないでしょうか。

応援に曖昧さは要らない

サビの「走り出せ!」→「今、全力 輝く未来へ」のワンフレーズに全ての純粋な思いが込められています。

五感全てが同じ方向(未来)を向いて統一されているかのよう、曖昧な表現が一切ない実にサビらしいサビです。

Aメロ、Bメロ、サビとややメリハリが緩いメロディーラインなので、歌詞がよく入って来ます。

「伝えたい事がある!」との意思表示が潔いです。

その潔さがかっこよさにもつながります。

主語を明確に

ZARDの「負けないで」が爆発的にヒットし、今もなお歌い継がれているのは、あのひたむきで前向きな歌詞があったからだと思います。

「負けないで」の主語は「あなた」です。

「開園DASH」の主語は「私たち」です。

イントロのラップ「踏み出した一歩~We’are PiiiiiiiN 乗り込んで行くぞ」は歌(アイドル)の世界に飛び込んで行く彼女たちの決意表明です。

「手と手を重ね合わせ」「この歌で届けるよ」「夢を叶えるから」のフレーズはやや既視感(きしかん)のあるものばかりです。

ただし、応援歌であるならばある程度、描写の限界内に言葉が収まらないとだめ(応援の状況が受け手から外れてしまう恐れがある)なのでこれは許容範囲なのでしょう。

人は頑張る人、対象を自然と応援したくなるので、この歌詞はそこに焦点を絞って書かれたのではないでしょうか。

ロック調にはロック調に添う応援があります。

最後に、とても力強く勇気あふれるこの曲、結果的なヒットの有無は拡散量の違いだったかもしれません。

お手本神曲:Fun×Fam|トキメキラキラ☆シャカリキラキラ

作詞はマイクスギヤマさんです。

グループにフィットした歌詞

このグループFun×Famの活動目的は、国民的アイドルを目指すのではなく、県内外に広く和歌山を知ってもらう、和歌山をPRする事です。

単に「ご当地応援」をしているのではなく、老若男女を問わず「人の生」を克明に「生きるエネルギー」に変えてくれる、このグループには不思議な力が宿っています。

Aメロの「たまには迷うけれど 無傷のまんまじゃ進めない」は素直な思いを力強さに溶かした至極前向きなフレーズです。

Bメロの「笑顔だけをともに咲かせながら」もまたしかり。

これらは安易に選ばれた措辞(そじ)なのではなく、やや精神論ですが「歌詞の共有感覚を最大公約数にまで広げる努力」その姿勢が受け手の共感を呼び、自然とこのグループにフィットして相乗効果を生んだのだと思います。

歌うグループをはっきりと想定して書かれた歌詞です。

トキメキとシャカリキ

言葉が歌の中で生まれ変わる、ここでは題名の一部ともなっている「トキメキ」と「シャカリキ」が新しい意味を持ち躍動します。

やや象徴的な「トキメキ」や「シャカリキ」といった甘い言葉が一段と愛おしく、頑張る人全員に向けた応援の言葉となっています。

ともに語尾に「キラキラ」と付けた事で軽みも感じられます。

応援を一種の祝(ほ)ぎ事と捉えられるなら情を深める単語はいらないでしょう。

思いっきり自分の思い入れのある言葉で応援するだけです。

その事はこの歌に、このグループに教えられた気がします。

いいフレーズはいい場所に

サビの「夢は」の惜しみ無い高音部とその後の一瞬のブレイクは、この歌最大の気持ちいいポイントです。

「夢」という言葉の密な感覚にふと空を見上げたくなります。

その後に続く「ちょっと強引なくらいに」(2番では「手に負えないほどあふれて」)の言葉には、若さ故の温かい情感を感じずにはいられません。

このつなぎの気持ち良さは他の曲ではなかなか味わえないでしょう。

いいフレーズはいい場所に収まってこそ輝きます。

あなたが作ろうとしているのが単なる「詩」なのではなく「作詞」だとするならば「何を以て曲との調和なのか」を考える事に少しだけ頭を悩ましても良いでしょう。

それがたとえ哲学的な考察であっても。

ライタープロフィール

アイドル作詞家・俳人

瀧乃涙pin句

何のツテもないまま作詞を開始。

数年後、文化放送ラジオドラマ主題歌『全身全霊Open Now!』song byガールズジョッキーまでたどりつく。

SPATIO『泣きそう』『レジスタンスガール』、SPATIO kids『温泉サンバ』、ナナエ『シューティングスター』『恋の話しよ!』他、ご当地アイドル、地下アイドルに歌詞を提供中。

週末はもっぱらアイドルを追い掛けている。

Twitter:t_pink_t

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